アスリートがテレビに出るときは、基本的には見るようにしているのですが、昨日11月2日のテレビ朝日「しくじり先生」という番組にかつて西武ライオンズで活躍した「G・G佐藤」選手が教師として出演していました。
コーチングの視点で見ると「つっこみどころ」満載の回だったのですが、今回はそのなかの一つをテーマとして取り上げてみたいと思います。
「しくじり先生」でのG・G佐藤選手の話
G・G佐藤選手は北京オリンピックの準決勝で2度のエラーをしてチームはそのまま韓国に敗れました。
そもそもこのオリンピックに臨むにあたってのメンタル面は非常にネガティブなもので、かなり緊張していたそうです。
そうこうしているうちにエラーを一つして、そのあとは「もうボール飛んでくるな…」と思うほど。
ですが、不思議なものでそういうときほどボールは飛んでくるんですね。
そして、悲劇の2度目のエラーがおこり、チームはそのまま敗れさることになりました。
準決勝の舞台で2度のエラーですから、本人も3位決定戦は「外される」と思ったそうですし、出たくもなかったとのことでした。
しかし、星野監督は3位決定戦にG・G佐藤選手を起用します。
ところが、やはりメンタル面の整理が付けられなかったG・G佐藤選手は3位決定戦でもエラーを犯してしまいました。
ラグビー日本代表HC エディー・ジョーンズの言葉
ここで話はとぶのですが、先のラグビーワールドカップで歴史的な勝利を飾った日本代表のヘッドコーチ「エディー・ジョーンズ」の言葉を引用してみたいと思います。
コーチングは「アート」なんです。
選手一人ひとりにとって、何が必要なのか、それを見極めるのがコーチングにおける『アート』なんです。
選手個々の能力を引き出すためには、どのようなコミュニケーションを取るべきなのか、それこそ数限りないケースが考えられるわけです。
その見極めにこそ『アート』が生まれる余地があります。
選手一人ひとりに性格があり、個性があります。
ある言葉でモチベーションが上がる選手もいれば、同じ言葉でも下がる選手もいる。
どのように言葉を選び、どう働きかけていくのか…
このコミュニケーションの機微こそが『アート』なのだとエディー・ジョーンズHCは語っているわけです。
星野監督のミス
さて、ここで先ほどのG・G佐藤選手の話に戻ります。
彼によると星野監督は「ミスをした選手は自信を取り戻させるために次の試合も必ず起用する」という信念をお持ちなのだそうです。
おそらく、星野監督の世代は「右向け右」的に「同じアプローチ」でコーチングが成り立ってきた背景があるのではないでしょうか。
しかし、これが「ミス」だったのだと思います。
星野監督が取るべきだったのはG・G佐藤選手とよく話をし、メンタリティを見極めることだったのではないでしょうか。
ある意味で選手を信じたのかもしれませんが、結果的に心の整理が取れないままに試合に臨ませることになってしまいました。
これはコーチングの失敗が招いた結果とも言えそうです。
まとめ
今回の話は、なにもアスリートに限ったことではないように思います。
学校や会社、家庭におけるコミュニケーションでも「唯一是絶対」とばかりに右向け右を強いる風潮はまだまだあるのではないかと思うのです。
これではたして人それぞれのパフォーマンスが最大限に発揮されるのか…
大いに疑問が残るところです。
G・G佐藤選手のエピソード、そしてエディー・ジョーンズHCの言葉から、これからのコーチングのあり方を考えさせられます。